鶯は姿を見せぬもの

ホーホケキョ
ホーホケキョ
って口笛しながら
ウチの前を通る人がいる

姿を見たことはなかった
どんな人なんだろう
想像しようとしても全く思い浮かばなかった
男なのか女なのか
若いのか老いてるのか

ただわかることは
自由な人に違いないこと

もう何年も続いていて
数え切れないくらいウチの前を通り過ぎた
風のように早いので
姿は見えぬままだった

ある日駅前で
ホーホケキョが聞こえた
あの人だ!
周りを見渡してみたけれど
たくさん人がいてどの人だかわからなかった
ホーホケキョ
ホーホケキョ
あぁどこにいるの?
遠くなっていく口笛の音

今朝
遠くから聞き覚えのある口笛が
ホーホケキョ
ホーホケキョ
ウチに近づいてくる!
今度こそ逃すまい
わたしはウチの前の通りを凝視して
待った

きた

通った

自転車に乗ってた
綺麗に光る頭のよく太ったおじさんだった
着ている服は
自由の人のそれだった
わたしは満面の笑顔になった

その人に話しかけることはないだろう
3メートル以内に来て欲しくはないタイプだったので
でも幸せな気持ちです今