梅雨どきは鬱っぽくなりたがる

体じゅうの細胞にたまっているのは
出口を見失った燃えかす
水にとけたままじっとしている

新しいアイデアを形にしたい
燃えかすの水が重くて
手も足もお腹も頭もどうにもこうにも

去年はこんなにしんどくなかった
今年はひとつ歳をとったのだ
ひとつ衰えたのだ

悲しい気持ちをくりかえす
悲しい気持ちは強化される

「梅雨のせいだよ」
君の笑い声
「今はみんなそうだと思うよ」
君の笑顔

わたしの悲しみは、テレビを消すみたいにしゅん、と消える
ひらめいたのは
ミント

ブラウスの前たてにぽつん、ぽつん、と2滴たらす

立ちあがれた
まだらに汚れ水は細胞に残っているものの

食べられないだろうと思っていたのに
ビシソワーズに誘われるままベーコンとじゃがいもピッツァからサルシッチャまで
平らげてしまっていた

わたしは実は健康なのだ
いつも病気に仕立てたがる心だけがある
頭では知っていてもぬかるみに突っ込むと抜け方がわからなくなる

君の気楽な笑い声
そしてスペアミントの香りが救い出してくれた

おそらくだが
ペパーミントでもアップルミントでもなく
スペアミントがよかった

いまも香っている